The lovely girl 「親父、何…ソレ?」 先程から自分の目の前でソレをコップに注いでいる父親に、リョーマは不安を覚えた。 「おぉ、リョーマじゃねぇか!いい所に来たな。これ飲めよ」 「嫌だ」 ソレは明らかに妖しい液体。少し紫っぽい色をしていて、ゴポゴポと音を立てているのは気のせいだろうか? 否。目の錯覚でも耳の幻聴でもない。 「いいから!飲め!!」 「ちょ…!うわ…」 ゴクッ… 意外と味は悪くないが…あの液体を見た後だと妙な不安が残る。 「親父…!これ、一体何だよ!!」 見た目には毒、とも言える。 「あ〜?知り合いがくれたもんだよ。俺も何の薬か分からん」 「このくそ親父!!」 「…っ〜!」 思いっきり南次郎を蹴飛ばした後、自室へと戻った。 (信じらんない!そんな得体の知れない物、息子に飲ませる?!) イライラとした気持ちを抑えるように、カルピンを胸に抱いた。 「はぁ…ま、何ともないみたいだし…いっか。寝ようか、カルピン?」 「ほぁら」 カルピンを抱いたままベットに入ると暫くして眠った。 今、自分の身体の中で起こっている異変に気付かぬまま…。 PIPIPIPIPIPIPIPIPIPIPI…… 「ん…あ、朝かぁ……」 目が覚めて、ベットからゆっくりと起きた。 着替えようとパジャマに手を掛けた時…やっと身体の異変に気付いた。 「何…これ…?」 普通なら平らなはずの自分の胸が、山になっている…。 「む、胸…?」 いや、可笑しいだろう。そう思って感触を確かめた。 プニ… 「何これ〜!?」 やっと焦ったリョーマの、悲痛な叫び。 その声に何事かと菜々子と南次郎が部屋に来た。 「どうしたの?リョーマさん。…?!」 「お〜♪こりゃ可愛い身体になったな、リョーマ」 「親父!こうなるって分かってたのかよ?!」 「あ〜、多少はな。んな訳分かんなかったら、飲ませるわけないだろ」 (十分訳分かんないし!) 「でも…困ったわね。学校どうするの、リョーマさん」 「あ…」 いや、こんな姿じゃ行けない。でも…休むのも嫌だ。折角テニスが出来る環境なのに…。 「…ねぇ、リョーマさん…。その…さらし巻いてみる?」 「そっか…それなら平気かな…」 そんなんでバレないのか?という疑問は置いて、とりあえず学校へ行けそうだからとリョーマは頷いた。 「じゃあ…菜々子さんお願い」 「はいvふふ、リョーマさんが女の子になるなんて…」 いそいそと準備をする菜々子は、南次郎に向かって一言。 「おじ様?女の子の裸なんだから、見ちゃいけませんよ?」 「ちっ、仕方ねぇな。朝練に遅れるから、早くしろよ」 そう言い残して部屋を出て行った。 さらしを巻かれながら…リョーマは息苦しさを感じた。 「な、菜々子さん…、さらしってこんな苦しいんだ…?」 「胸があるから苦しいんだと思いますよ」 にこにこと笑顔で言われて、リョーマは黙った。 何となく…部活の先輩を思い出す笑顔だったからだ。 「はい、出来ましたよ」 「有難う。じゃあ、行かなきゃ…」 時間的に厳しいので、朝ご飯を食べずに家を出た。 (どうでもいいけど…戻るのかな。コレ…) 自分の胸を押さえながら、思わずまだ確認していなかった下を意識してみた。 …ない。 「…くそっ!親父恨む!」 そんな言葉を残しながら、遅刻ギリギリの中、学校までの道のりを走った。 |